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鈴木 なぎさ さん (女性・40代・東京都)

イタリアンレストラン『いしがみosteria』 オーナーソムリエ

「プロの料理人の夫」を支えたい。知識ゼロから始まった挑戦

私たちが自分のお店を立ち上げたとき、主人はすでにプロの料理人として厨房を背負っていました。一方で私は、ワインに関してはまったくの素人。「夫が料理を作り、私はホールでお皿を運ぶ」という役割からのスタートでした。当初は、自分が客として食べ歩きを楽しんだ中で「美味しい」と思ったワインを出している状態だったのです。

しかし営業が始まると、お客様の方がワインにお詳しいことも多く、「このままでは恥ずかしい、プロである夫の料理に泥を塗るわけにはいかない」と強い危機感が芽生えました。「美味しいお料理を、もっと素晴らしい体験として届けたい」。その一心で、知識ゼロから猛勉強をスタートしたのです。

当時の日本のソムリエ試験の勉強は、まさに「受験勉強」そのものでした。辞書のように分厚い教本をがっちり読み込み、ひたすら暗記する日々。素人の私には本当に大変でしたが、このとき世界のワイン産地を網羅する基礎を叩き込んだことが、ソムリエとしての確かな一歩となりました。


 独学で掴んだ資格のその先へ。現場で感じていた「実践への不安」

ほぼ独学で日本のソムリエ試験をパスすることはできましたが、いざ日々の営業を迎えると、心の中には常に不安がありました。

「本当にこのワインリストでいいのか」「このお料理に対して、自信を持ってこのワインを勧められているだろうか」。

教科書通りの知識はあっても、ワインリストの作り方や、お料理とワインの合わせ方で、実践的な経験が足りないことを痛感していました。

「もっと勉強したい」と思っていたとき、Facebookで日本人向けのAISコースの存在を知りました。

「イタリアのワインを、その土地の空気の中で勉強したら、現地のソムリエや生産者のリアルな考え方がもっと深く理解できるかもしれない」。

そう期待に胸を膨らませ、受講を決めました。特に、現地の食材を使ったお料理とワインの組み合わせ・アビナメントの授業は、受講前から本当に楽しみにしていました。


本場のプロが教えてくれた、ワインと正しく向き合う姿勢

日本でのベースがあったからこそ、イタリアでの学びは驚くほど立体的に頭に入ってきました。AISのコースは、日本での「机上の勉強」を「現場で生きる最強の武器」へと昇華させてくれる場所だったのです。おびただしい量のテイスティング、そして料理とワインを合わせるアビナメントの試食を実践的に繰り返す日々。講師陣や通訳の皆さんも本当に素晴らしく、少人数のアットホームなクラスで、全員に対して常に紳士的かつ丁寧に授業を進めてくださいました。

そんなクラスで、今でも印象に残っているエピソードがあります。ある日テイスティングしたワインが、とても青臭いハーブ感の強いものでした。私が「これをお食事と合わせるなら何が良いですか?」と質問したところ、先生は真顔で「ワインが不味い!こんなのワインを作るの辞めちまえ!」と一刀両断。心の中で大爆笑してしまいましたが、本場のプロのストレートな意見に、逆に清々しさを感じました。

もちろんそこには造り手へのリスペクトがあるからこそ。それ以上に「ワインは食と合わせてお互いを高め合う存在である」という、イタリアの基本姿勢が根底にあるからこその言葉だと、深く感心させられたのです。このように、お互いが本音で意見を交わし合える環境は、少人数クラスならではの恵まれた魅力でした。

また、日本で流行しているナチュラルワイン等に対し、先生が「従来のテイスティング方法では測れない酸味や香りがある。今のロジックにはないけれど、適切な評価方法が必要だ」と話されていたことも深く心に残っています。ただ流行を追うのではなく、あらゆるワインに常に正しく、誠実に向き合おうとするプロの姿勢に感動し、「またこの先生方に教えてもらいたい」と心から思いました。

さらに、教室を飛び出し「実物」を見ながら学べる環境も圧巻でした。ブドウ畑やワイナリー、冷却装置やセメントタンク、ずらりと並ぶ樽。伝統的なデザートワイン『ヴィンサント』が発酵の過程で吹き出して汚れた壁のシミ。そうした現地のリアルな光景を体験することで、教科書の文字でしかなかった知識が、すんなりと脳裏に焼き付いていきました。


伝統だけに縛られない。予算に合わせて最適解を導ける一生物の経験。

帰国後、お店の営業で役に立っていることは数え切れません。

まず、初めて飲むワインであっても、価格やインポーター、ブドウ品種などの先入観にとらわれず、「どこが良いところで、どこが気になるか」を正確に点数化できるようになりました。

余韻やバランスという、テイスティングの本当の基礎が身についたことで、ワインを味わうこと自体が以前より何倍も楽しくなりました。

そして何より、お料理に対して、合わせるワインを迷わず決められるようになりました。

郷土料理と地ワインのような「テッパンの伝統的な組み合わせ」だけでなく、お客様のご予算に応じて別の選択肢を提案しなければならない場面が多々あります。

そんな時、AISで学んだ「お料理の味、甘味、塩気、脂っぽさ、食感、ハーブやスパイスの余韻」といった様々な要素を因数分解し、補い合わせるというテクニックが、今とても役に立っています。

伝統や自分の味の好みに縛られず、お客様のご予算の中で最高のペアリングを提供できる自信がつきました。

そして、私にお店を支えるそんな貴重な経験をさせてくれたのは、私がイタリアにいる間、日本でワンオペでお店を回し続けてくれた夫と、快く温かく送り出してくださった常連のお客様たちです。

この溢れるほどの感謝の気持ちを、これからはお店で素晴らしいワインを提供し、最高の時間をお届けすることで、しっかりと恩返ししていきたいと思っています。


最高の思い出が詰まった、大好きなモンテカティーニの街

オプションのワイナリー訪問や食事会も最高の経験でした。個人旅行では絶対に立ち入れないような素晴らしい場所で、貴重な試飲をたくさんさせていただきました。

そして、1ヶ月を過ごしたモンテカティーニの街が大好きになりました。治安も良く、女性1人でも怖い思いをすることなく安心して歩けます。2月の受講でしたが、寒さは東京と同じくらいで過ごしやすかったです。

駅やスーパー、コインランドリーも徒歩圏内にあり(コインランドリーの機械の使い方が分からなくて、なぜか現地の人に使い方を聞かれたりしたのも良い思い出です笑)、生活には困りません。美味しいカフェやドルチェの誘惑が多くて、甘いもの好きの私にはたまりませんでした。

叶うなら、次は質問をたくさん用意して、もう一度あのレッスンを受けに行きたいです。今度はもっと先生たちを質問攻めにしたいです。

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